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ADH分泌異常症

1. 概要

ADHは抗利尿ホルモンで、水分が体から必要以上に漏れ出さないように調節するホルモンで、脳の中の視床下部という場所で作られ、その下にある下垂体の中で後方に位置する後葉と呼ばれる場所に貯蔵されます。このホルモンの名前は現在国際的にはバゾプレシンと呼ばれています。ADH分泌異常症には下垂体後葉からバゾプレシンの分泌が低下し、尿量増加(多尿)・口渇(のどの渇き)・多飲(水分のがぶ飲み)が起こる中枢性尿崩症と、バゾプレシンが必要以上に出過ぎて(過剰分泌)、体の中の水分が過剰となり、血液の希釈(薄められる)が発生するSIADH(バゾプレシン分泌過剰症)の二つの病態が含まれます。

2. 疫学

限られた調査から予測される患者数の目安は約6,400人 (うち中枢性尿崩症が4,700人、SIADHが1,700人)ですが、診断法の発達などにより、実際の患者数はこれよりかなり増加しているものと考えられます。

3. 原因

  中枢性尿崩症では脳腫瘍、外傷、脳血管障害などもとになる病気(基礎疾患)に基づくものが過半数を占めますが、その他に遺伝性に発生するもの、あるいは原因が不明な特発性の病態もあります。SIADHでは、中枢神経系疾患、肺疾患などに随伴し発生することが多く、バゾプレシン分泌調節の異常、腫瘍からの異所性バゾプレシン産生(本来バゾプレシンは下垂体からしか出てきませんが、一部の肺癌などでは腫瘍からバゾプレシンを分泌することがある)の場合があります。どちらの病態についても現在その病因の詳細を明らかにするための研究が進んでいます。

4. 症状

中枢性尿崩症では多尿(3L以上/日)、口渇、多飲(冷水を好む)が主症状となり多尿のため、夜間に何度も排尿することが多くなります。夏季には脱水傾向となりやすく、発汗の減少、皮膚・粘膜の乾燥、微熱などを発生することもあります。SIADHでは軽症では症状はこの病気に特異的なものはなく、いろいろな病気でも見られる倦怠感(疲れやすさ)、食欲低下などしか起こらないことが多いのですが、急性に起こったものや重症なものでは中枢神経の症状(痙攣、意識の低下)などが起こることがあり生命が危険になることもあります。

5. 合併症

中枢性尿崩症では腎臓から多量の水分が排泄されるため、水腎症や巨大膀胱などの2次的変化を引き起こすことがあります。SIADHでは脳浮腫の発生とそれによる脳ヘルニアなどの危険性があります。

6. 治療法

  中枢性尿崩症では不足しているバゾプレシンを補うことが原則です。バゾプレシンそのもので治療すると血圧の上昇、胃腸の不調などの副作用をおこすことがあるため、現在は副作用をほとんどおこさないデスモプレシン製剤を点鼻(鼻にスプレーする)して投与しています。近い将来、デスモプレシンの経口薬が利用できるよう間脳下垂体機能障害に関する調査研究で現在開発を進めています。SIADHでは過剰な水分がたまるのを防止する目的で飲水量の制限を行います。また、バゾプレシン異所性産生腫瘍によるSIADHではバゾプレシンの受容体拮抗剤(バゾプレシンが効く部分にふたをして作用を弱める)であるモザバプタンが特異的治療法となり使用できます。