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下垂体性TSH分泌異常症

1. 概要

 甲状腺の機能は、主に視床下部ー下垂体ー甲状腺系によって一定に保たれています(図1)。視床下部より分泌された甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(Thyrotropin-releasing homorne, TRH)が下垂体に到達し、下垂体前葉の甲状腺刺激ホルモン(Thyrotropin, TSH)を分泌させ、そして、TSHは甲状腺を刺激し甲状腺ホルモンが分泌されています。ですから、視床下部や下垂体に何らかの異常があり、下垂体からのTSHの分泌が低下すると、甲状腺からの甲状腺ホルモンの分泌も低下し、「TSH分泌低下症」という病態になります。一方逆に、下垂体からのTSHの分泌が多くなりすぎると、甲状腺からの甲状腺ホルモンの分泌が増え「TSH分泌亢進症」となります。 
 下垂体性TSH分泌低下症は、中枢性甲状腺機能低下症と呼ばれることもあります。
また、TSH分泌亢進症は、多くの場合下垂体に腫瘍がありTSHが過剰に分泌されるTSH産生腫瘍を原因としています。

2. 疫学

  下垂体性TSH分泌亢進症のうちTSH産生腫瘍は、すべての下垂体腫瘍の1〜2%と比較的稀な疾患です。また、平成13年度の全国調査では、下垂体性TSH分泌低下症は787名であると報告されています。

3. 原因

   下垂体性TSH分泌亢進症を示すTSH産生腫瘍の原因は不明ですが、一部は多発性内分泌腫瘍症1型という内分泌腺に腫瘍ができやすい体質の一つの症状として認められます。
   また、下垂体性TSH分泌低下症の約60%は下垂体部の腫瘍を原因としています。その他何らかの治療で頭への放射線療法を行った後や、意識障害をともなった重症の頭部への外傷後やくも膜下出血の後に起こるものも知られています。さらに、種々の薬剤による場合もあります。

4. 症状

 TSH分泌亢進症のうちTSH産生腫瘍では、ほとんど症状のないものから甲状腺ホルモンが増えてバセドウ病のように動悸や体重減少などが認められることもあります。
 また、TSH分泌機能低下症のうち成人発症のものではほとんど症状を示さないものから無気力、易疲労感、眼瞼の浮腫、寒がり、便秘などの甲状腺機能の低下症を示すものまであります。

5. 合併症

   TSH分泌亢進症では、甲状腺ホルモンが増加し、心房細動や心不全などの心臓の症状を合併することもあります。
   また、TSH分泌機能低下症では、甲状腺ホルモンが低下し高コレステロール血症(LDLコレステロール)などを合併することがあります。

6. 治療法

   TSH産生腫瘍は手術が第一選択です。また、多くの場合甲状腺機能はソマトスタチンアナログ製剤の注射により正常化できます。このソマトスタチンアナログ製剤だけで長期間の治療が可能かはまだ結論がでていません。
   TSH分泌低下症の治療はその原因疾患を治療することが第一です。甲状腺ホルモンの低下症には経口の甲状腺ホルモン製剤が投与されます。しかし、下垂体腫瘍などによる場合は同時におこる副腎という内分泌腺の機能低下症を合併する例もあり、その場合は必ず副腎皮質ホルモン製剤を最初に投与し、その後甲状腺ホルモン製剤を投与します。